2012年7月17日代数幾何学 1 2 3 (R.ハーツホーン著 訳 高橋宣能 松下大介)(R. Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer (1977).の日本語版)


代数幾何学 1 2 3 (R.ハーツホーン著 訳 高橋宣能 松下大介)(R. Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer (1977).の日本語版)


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だいたい多項式の零点集合についての話です。(雑すぎる)
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代数幾何学 1 - R.ハーツホーン 単行本 ¥4,104


第1章 多様体
1.1 アファイン多様体
1.2 射影多様体
1.3 射
1.4 有理写像
1.5 非特異多様体
1.6 非特異曲線
1.7 射影空間における交わり
1.8 代数幾何学とは何か

第2章 スキーム
2.1 層
2.2 スキーム
2.3 スキームの基本的性質
2.4 分離射と固有射
2.5 加群の層
2.6 因子
2.7 射影的射
2.8 微分
2.9 形式スキーム


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第3章 コホモロジー
3.1 導来函手
3.2 層のコホモロジー
3.3 Noetherアファインスキームのコホモロジー
3.4 Čechコホモロジー
3.5 射影空間のコホモロジー
3.6 Ext群とExt層
3.7 Serre双対定理
3.8 層の高次順像
3.9 平坦射
3.10 滑らかな射
3.11 形式函数定理
3.12 半連続性定理

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第4章 曲線
4.1 Riemann-Rochの定理
4.2 Hurwitzの定理
4.3 射影空間への埋め込み
4.4 楕円曲線
4.5 標準埋め込み
4.6 P3内の曲線の分類
第5章 曲面
5.1 曲面上の幾何
5.2 浅織曲面
5.3 モノイダル変換
5.4 P3内の三次曲面
5.5 双有理変換
5.6 曲面の分類

付録A 交叉理論
A.1 交叉理論
A.2 Chow環の性質
A.3 Chern類
A.4 Riemann-Rochの定理
A.5 補遺と一般化

付録B 超越的な方法
B.1 付随する複素解析空間
B.2 代数的な圏と解析的な圏の比較
B.3 コンパクト複素多様体はいつ代数的か
B.4 Kähler多様体
B.5 指数完全列

付録C Weil予想
C.1 ゼータ函数とWeil予想
C.2 Weil予想に関する取り組みの歴史
C.3 l進コホモロジー
C.4 Weil予想のコホモロジー論的解釈
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R. Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer (1977).

は「スキーム論」の標準的テキストとして極めて有名である。3 章のコ ホモロジー論の部分は非常によく書けていると思うし、4 章と 5 章の曲 線論と曲面論もそれなりに楽しいが、この本だけで幾何学的なイメー ジをつかむのは大変である。下記の Mumford の本などで代数幾何学の 神髄に触れてからこの本で「スキーム論」を学ぶ方が良いと思う。日本語訳も存在する。


Table of contents (5 chapters)
Varieties
Hartshorne, Robin

Pages 1-59

Schemes
Hartshorne, Robin

Pages 60-200
Cohomology
Hartshorne, Robin

Pages 201-292
Curves
Hartshorne, Robin

Pages 293-355
Surfaces
Hartshorne, Robin

Pages 356-423

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キーワード・キャラクター

スペクトラム

環の素イデアルの集合にZariski位相を入れたモノ。Zariski位相はめっちゃ粗いのでコンパクトにはなりますが、大抵の場合Hausdorffにはなりません。どうしてこんな位相を入れたんだ!と思うかもしれないですが、ただ位相空間を対応させるだけじゃなく関手になるようにしようと思うと、非自明な位相の与え方はあんまり選択の余地がないのです。

アファインスキーム

環の素イデアルの集合に、その上の層を対応させたモノ。環の圏と圏同値があるので、だいたい環。

スキーム

多様体 (manifold) とは局所的にユークリッド空間みたいになってる局所環つき空間のことですが、それに似せて作られた代数概念がスキームです。すなわち、スキームとは局所的にアファインスキームと同型な局所環つき空間のことです。グロタンディークが思いつき、代数幾何が飛躍的に発展するきっかけとなりました。

グロたんがスキームを考える前は、射影空間で斉次多項式の共通零点として表される集合 (射影多様体) が主に代数幾何の対象になっていたようです。射影多様体はスキームと違ってすべての点が閉点なのですが、それはあんまり重要な違いではないと M 先生がおっしゃっていました。むしろ重要なのは、構造層が整域に限定されてしまっていることだと。なるほどー?

局所環

可換環論で初めて登場したとき、「どうして局所環っていう名前なんやろな」と思いませんでしたか。代数幾何を勉強するとこのネーミングが納得できるようになります。つまりは、スペクトラムの構造層の茎が局所環になるから、局所的だと思えるわけですな。

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1章
この章では多様体の概念が導入され,射や有理写像,非特異の概念,非特異曲線,射影多様体の次 数が紹介される.本書での多様体はすべて射影空間に局所的閉集合として埋め込まれるもの,すなわ ち準射影多様体のことである.これは Mumford の “The Red Book . . .” が多様体をアファイン集合 の,分離条件を満たすような張り合わせとして定義し,射影空間への埋め込みを仮定していないのと 対照的である.直積の概念を本文で用いるのであるが,この構成は演習問題に入っている.セミナー の学生が困るところであるが,2 章でこれを拡張したファイバー積の構成が本文で取り扱われている のでちょっと我慢してもらうしかないだろう.類似の構成を両方とも本文で扱うこともないだろうと いうのが著者の気持ちだと思われる.
最初の章というのは導入部で抽象的になりがちなところであるが,非特異曲線の節で非特異曲線の 双有理的分類を完結させてみせ,‘高次元ではどうなるだろう’ という読者のモティベーションを高め てくれる.ここで指導教員の高次元に関する知識の出番で,うまくすれば学生がこの道に進んでくれ る可能性もある.
 射影多様体の次数公式の系としてベズーの定理が紹介されているが,具体的な方程式を与えて計算する例か演習問題がほしいところである.

2章
ここでは 1 章の多様体を一般化したスキームが取り扱われる.層が定義され,位相空間と層からな る環付き空間で,局所的に環のスペクトラムになっているものをスキームと定義する.ここで埋め込 み空間から解放される.多様体が準射影的な被約で既約な体上有限型スキームと同一視されることが, 両者の間の写像を作って注意深く証明される.この章ではさらに固有射や射影的射,因子や微分が定 義され,代数幾何学を勉強するための道具が整っていく.私の学生の場合は,通常この章まではセミ ナーで勉強し,本書の残りの章は自分で勉強しておくことにしている.この章までセミナーできちん とした発表ができる学生は残りも自分だけで読みこなす力がついているので,この時点で論文を読み 始めても困難はない.
内容について少し違和感を持つ人がいるかもしれない点を 2 つあげると,まず,本書の射影的射は EGA [ 2 ] の射影的射より強いことである.EGA での射影的射は局所的性質であるが,本書ではそう ではないことに注意しなければならない.第 2 は連接層の定義である.連接層は ‘局所的に有限生成 加群 M から導入される層 M ̃ と同形になっている層’ と定義されている (したがってスキームの構造 層が連接になるのは自明) がこれは,複素解析幾何学などを先に学び,連接層とは ‘任意の開部分集合 上で,その層の有限生成部分加群層が有限表現であるもの’ と定義し,解析空間の構造層が連接にな ることの証明を岡や Cartan の結果から勉強した経験のある人達には抵抗があるかもしれない.しか しネータースキームで考えると両者の定義は同じものになるので気にすることはない.

3章
ここではすべての対象が入射的分解をもつ圏について右導来関手を導入する.この双対として,射 影的分解を持つ圏についての左導来関手についてはいっさい取り扱わない.したがって Tor 加群も登 場しない.Cartan–Eilenberg [ 1 ] のように双対のものを並べて書くというのも書き手にとってはすっきりして気持ち良いかもしれないが,左右が同時に登場すると読者にとっては印象が半分になり混乱 のもとである.‘右手にお箸を持つ’ ということを完全に叩き込んでから,その後必要があれば ‘左手 でお茶碗をもつ’ と教えるのが賢いやり方だろう.
層の大域切断の右導来関手として層のコホモロジーを定義し,すぐにアファインスキームのコホモ ロジーを計算し,Cˇechコホモロジーにつなげている.そしてこれを使って,具体的な多くの場合の基 礎になる射影空間のコホモロジーを計算している.その後,Ext 群と Ext 層を Hom と Hom の右導来 関手として導入している.Ext1 の元と拡張 (extension) が 1 対 1 に対応することは問題に登場する. Ext を使えば射影多様体上の任意の連接層に対して Serre 双対性が定式化でき証明される.平坦射と 滑らかな射の節が 2 章ではなくこの章に入っているのは,コホモロジーを使うヒルベルト多項式が不 変であることが平坦射影的射の重要な性質であるからであろう.滑らかな射は平坦射より前に持って くることはできない.

4章
この章は曲線の章であるが,1 章で附値論的な議論をしたので,曲線の幾何学のみに焦点を当てて いる.Riemann–Roch の定理,二つの曲線間の写像に関する公式 (Hurwitz の定理),射影空間への埋 め込みを紹介し,任意の曲線が 3 次元射影空間に埋め込まれることを示し,最後の章で 3 次元射影空 間内の曲線の分類を行っている.これらは曲線に関しての最小限必要な項目を手際良くまとめたもの といえるだろう.(最小限度なので平面曲線についてはほとんどふれられていない.) ただし,4.4 だ けは趣が違い,楕円曲線に関して複素数体上の場合も込めて丁寧に記述している.色々な方向からの アプローチが可能な豊潤な分野であるので著者も色々な項目を入れようとして欲張って書いているよ うである.

5章
ここでは非特異な射影曲面を扱う.最初の曲面の幾何の節では曲面特有の性質:因子が曲線であるこ と,二つの因子の交わりが点であることを充分に認識しようということに当てられ,曲面の Riemann– Roch の定理が紹介される.曲面の双有理幾何学ではモノイダル変換がきわめて重要な役割を果たす ことが,双有理変換の節で紹介される.この準備のためモノイダル変換に 1 節を使い,例外曲線の特 徴付けなど,モノイダル変換の重要事項が紹介される.これらは曲面の一般論であるが具体的な曲面 の議論は,小平次元が −∞ の場合 (ここでは 5.2 の線織曲面と 5.4 の P 3 内の三次曲線) だけに焦 点が当てられている.とくに線織曲面の節が充実している.これはとても良い動機付けになるだろう. すべての小平次元の曲面をさっとなぞる紹介をするよりも実質的で教育効果が高い.小平次元が 0 以 上のものについては,曲面論のテキストが色々出版されているのでそれを参照すれば良いし,そうす ると Hartshorne の,この教科書で学んだ −∞ の場合がいかに際立っているかが良くわかる.

5 章の後,交叉理論,超越的な方法,Weil 予想の三つの付録がついている.これらの付録は,著者 自身もっとたくさんの付録を付けたいと思っていたことからわかるように,本書の本文がきっかけに なって色々な方向に読者が前進してほしいという著者の情熱的な願いの現れだと考えられる.
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「代数幾何学 1 2 3 (R.ハーツホーン著 訳 高橋宣能 松下大介)」を読む前に目を通す書籍


要は可換環論の基礎的なことは理解しているものと仮定されている、ということですね。圏、関手、自然変換、圏同値の定義も知っておくと役に立つでしょう。

たとえば次に挙げる本に目を通しておくと良いです。

松村英之「可換環論」

可換環論についての有名な本。環論を初めて学ぶひと向きではないことに注意。

雪江明彦「代数学2 環と体とガロア理論」(代数学1と3もオススメ)

ガロア理論と環論の基礎を学べる本。記述が丁寧なので初学者にも勧められます。

Atiyah‐MacDonald 可換代数入門

略してアティマク。有名な可換環論の本。

T.レンスター「ベーシック圏論 普遍性からの速習コース」

基礎的な圏論を学べる。Kan拡張は載っていないが、わかりやすいという長所があります。略称はベシ圏。

Emily Riehl「Category Theory in Context」

Kan拡張が載っている、やや詳しめの圏論本です。
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D. Mumford, Algebraic Geometry. I. Complex projective varieties, Springer (1976).

である。この本を講究のテキストとして読んだという研究者は多い。研 究者生産能力の非常に高い本と言って良いと思う。この本には「スキー ム論」も「複素多様体論」も「層係数コホモロジー論」も出てこない が、代数幾何学の神髄に早い段階で触れることの出来る良書である。私 も 4 回生の講究でこのテキストを読んだ。ちゃんと理解しようとする と結構難しい本であることに気付くと思う。

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この本の次は

続けて具体例がたくさん載っている本を読むべきとされます。


Silverman「The Arithmetic of Elliptic Curves」

よくAECと言われる本です。楕円曲線の有名な本。(この本はかなりよかった!)

David Mumford「Abelian Varieties」

Abel多様体の有名な本。

森脇淳 川口周 生駒英晃「モーデル‐ファルティングスの定理―ディオファントス幾何からの完全証明」

モーデル・ファルティングスの定理という大定理の証明を一から追っていく本。

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宮西正宜、代数幾何学、裳華房 (1990).

私が学生のころは入手可能な日本語で書かれた「スキーム論」の本は この本しかなかった。この本はバランスの取れた良書だと思う。コホ モロジー論の部分は Hartshorne の本には及ばないが、代数的な代数幾 何学を勉強するのに必要な知識はこれ一冊で大体揃うと思う。「スペク トル系列」や「層」や「可換環論」についても必要なことがまとめて あるので、この 1 冊で「スキーム論」の基礎はとりあえず十分だと思 う。この本で一通り「スキーム論」を勉強し、コホモロジーの部分だ け Hartshorne を読むという方法も良いかもしれない。

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「フェルマー予想 斎藤 毅 7452円 岩波オンデマンド」を読むための基礎


整数論1: 初等整数論からp進数へ - 雪江明彦 単行本 ¥3,672

整数論2: 代数的整数論の基礎 - 雪江明彦 単行本 ¥3,672

整数論3: 解析的整数論への誘い - 雪江明彦 単行本(ソフトカバー) ¥3,672

代数学1 群論入門 (代数学シリーズ) - 雪江明彦 単行本(ソフトカバー) ¥2,160

代数学2 環と体とガロア理論 - 雪江 明彦 単行本(ソフトカバー) ¥3,240

代数学3 代数学のひろがり - 雪江 明彦 単行本(ソフトカバー) ¥4,536


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代数幾何学 2 - R.ハーツホーン 単行本 ¥2,592

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N.コブリンツ著(上田勝〔ほか〕訳)『楕円曲線と保型形式』
土井公二/三宅敏恒著『保型形式と整数論』
志村五郎著『Introduction to the theory of automorophic functions』
J.H.シルヴァーマン・J.テイト著(足立恒雄〔ほか〕訳)『楕円曲線論入門』
Knapp著『Elliptic curves』
河田敬義著『数論I, II, III』
藤崎源二郎・森田康夫・山本芳彦著『数論への出発』
上野健爾著『代数幾何学入門』
肥田晴三著『Elementary theory of L-functions and Eisenstein series』
清水英夫著『保型関数I, II, III』
廣中平祐著『代数幾何学』(森重文 記録)
宮西正宣著『代数幾何学』
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一般の人のおすすめの本

フェルマーの最終定理 【著者】サイモン•シン(青木薫 訳) 【発行】新潮社(新潮文庫) / 「解決!フェルマーの最終定理 現代数論の軌跡」加藤和也著、日本評論社
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文系用読者:「教育者」としてのあの頃の感覚として読む
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フェルマーの最終定理 【著者】サイモン•シン(青木薫 訳) 【発行】新潮社(新潮文庫)
整数に関する問題は、問題を理解するのはやさしいが解くのはとてつもな く難しいことが多い。この本の表題ともなっている「フェルマーの最終定理」 の証明もそのような整数問題の1つであり、アマチュア・プロを問わず 300 年もの間、多くの数学者の挑戦を退けてきた問題である。1995 年最終的に 証明を成し遂げた勝者はアンドリュー・ワイルズという数学者であった。し かし、その証明への取り組みは試練に満ちており、7年間の隠密行動、そし て1度は証明できたと発表して、その後証明に穴があることがわかり1年余 りの間、公にさられた状態での穴埋め作業の末ようやく証明完了というドラ マが書かれています。谷山、志村、岩澤、肥田といった日本人数学者もからみ、困難な問題にチャレンジする人間模様を描いた物語として、一読を。
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理系用読者:「数学者」としてのあの頃の感覚として読む
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【書名】「解決!フェルマーの最終定理 現代数論の軌跡」加藤和也著、日本評論社
( フェルマーの大定理が解けた!―オイラーからワイルズの証明まで (ブルーバックス) 足立恒雄著 新書 )
( フェルマーの大定理―整数論の源流 (ちくま学芸文庫) 足立恒雄著 )
 

  1993年6月23日に、プリンストン大学のA.ワイルスが、フェルマーの最終定理の証明を宣言し、その後、証明の不備が見つかり、1年以上に苦考の末、1994年9月19日にその修正に成功したこの期間に、著者が証明の解説として数学セミナー読者向けに書いたものを集めたものである。厳密性はないが、極力丁寧に、正確に伝えようとする、著者の誠実さと、理解の深さが伝わってくる。原論文の 1. A. Wiles; Modular elliptic curves and Fermat's last theorem, 2. R. Taylor, A. Wiles; Ring theoretic properties of certain Heck algebras にも、整数論にも、非常に惹きつけられる内容だった。購入時にも読んだと思われるが、詳しく覚えていないところをみると、理解しようとはしていなかったのかもしれない。むろん、今回も十分な時間をかけて読んだとは言えないが。
 
以下は備忘録
「砂田利一『基本群とラプラシアン、幾何学における数論的方法』」(p.37)「ワイルス『ぼくは、フライとリベットの結果を知ったとき、風景が変化したことに気がついた。(中略)この時まで、フェルマの最終定理は、何千年間もそのまま決して解かれることがなく数学がほとんど注目することがない数論の他の[散発的かつ趣味的な]ある種の問題と同じようなものに見えていた。フライとリベットの結果によって、フェルマの最終定理は、数学が無視することのできない重要な問題の結果という形に変貌したのだ。(中略)ぼくにとって、そのことは、この問題がやがて解かれるであろうと言うことを意味していた』」(p.67)「清水英夫著『保型関数I, II, III』、志村五郎著『Introduction to the theory of automorophic functions』、Knapp『Elliptic curves』、河田敬義著『数論I, II, III』、藤崎源二郎・森田康夫・山本芳彦著『数論への出発』、上野健爾著『代数幾何学入門』、J.H.シルヴァーマン・J.テイト著(足立恒雄〔ほか〕訳)『楕円曲線論入門』、土井公二/三宅敏恒著『保型形式と整数論』、肥田晴三著『Elementary theory of L-functions and Eisenstein series』、吉田敬之著『保型形式論: ─現代整数論講義─』、N.コブリンツ著(上田勝〔ほか〕訳)『楕円曲線と保型形式』」(p.123,4)「田口雄一郎さんの手紙に『Deligne さんの家はこの道の始まりのところ、森の入り口にあります。Deligne さんといへども、森羅万象の真理の最奥に至る道のほんの入口のところにゐるに過ぎないといふ、これは自然による卓抜な比喩であると思われます。ところが、恐ろしいことに彼の子供たちは毎日この道を通って森のむかうの学校に通ってゐるらしいのです。』とありました。フェルマーからの350年は大進歩でしたが、人類が続いてゆけば、それは今後何千年の数学の序曲であり、何段も何段も自然の深奥への新しい段階があることでしょう。」(p.239)「ガウス『どのように美しい天文学上の発見も、高等整数論が与える喜びには及ばない』ヒルベルト『数論には古くからの問題でありながら、今日も未解決のものが少なくない。その意味で、多くの神秘を蔵する分野であるが、他方、そこで展開される類体論のような、世にも美しい理論がある』」(p.245)「岩澤健吉『代数体と、有限体上の一変数関数体は、どこまでも似ていると信じてよい』」(p.246)「志村五郎は『整数論いたる所ゼータ関数あり』と述べたが今その言葉に『ゼータ関数のある所 岩澤理論あり』と続けて考えたい」(p.261)『ゼータ関数のある所 肥田理論あり』ともいえる。
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原論文の
 1. A. Wiles; Modular elliptic curves and Fermat's last theorem, 
 2. R. Taylor, A. Wiles; Ring theoretic properties of certain Heck algebras
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発展
論文集 (志村五郎)
Collected Papers. I: 1954-1965 (Hardcover ed.). Springer. (2002). ISBN 978-0-387-95406-6.
Collected Papers. II: 1967-1977 (Hardcover ed.). Springer. (2002). ISBN 978-0-387-95416-5.
Collected Papers. III: 1978-1988 (Hardcover ed.). Springer. (2003). ISBN 978-0-387-95417-2.
Collected Papers. IV: 1989-2001 (Hardcover ed.). Springer. (2003). ISBN 978-0-387-95418-9.
など