2012年3月9日  最終講義(吉田敬之 理学研究科教授) 積分の周期について
 

 理学研究科 数学・数理解析専攻(数学教室) 吉田敬之 教授の最終講義を以下のとおり実施します。


平成24年3月9日(金曜日)13時30分~15時30分


演題


積分の周期について


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吉田敬之氏「保型形式と周期の研究」

https://mathsoc.jp/section/algebra/pdf/2006-yoshida.pdf


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=メモ 書き=
吉田敬之氏「保型形式と周期の研究」

数論的多様体とそのコホモロジー類の最も豊かで興味深い例は,いうまでもなく モジュラー多様体と保型形式です.吉田敬之氏は,研究者としての出発以来,一貫して 保型形式理論とその周辺を深く詳しく研究してきました.このたび授賞の対象とされた のは,氏が最近 10 年ほどにあげられてきた業績で,大きく分けて三つの話題(Hilbert 保型形式,Siegel 保型形式,絶対周期記号)を扱っています.それぞれについて簡単に 解説します.

(1) Hilbert 保型形式の周期に関する志村予想の解決

周期の研究は,保型形式の理論において重要なウェイトを占めていますここでいう 周期とは保型形式が定義されている多様体のサイクルで保型形式を積分して得られる 量のことです保型形式から得られる 函数の特殊値をこのような周期と関係付けて 調べるのは,周期の研究の中心的話題ですたとえば を < n < k なる整数とする とき一変数の重さ の尖点形式 に対して周期
吉田敬之 積分の周期について

を考えることができますがこれらの周期の本質的部分は符号 ε = (1)だけで定まる ことが知られていますこの周期(の本質的部分)を cε(fで表すと L函数の特殊値 L(n,f2つの周期c+(f), c(fによって表されるというのが古典的な Eichler–志 村の理論です.

志村五郎氏はこの理論をさらに総実代数体上の Hilbert 保型形式に対して拡張しまし たを 次の総実代数体を 上の Hilbert 保型形式とします志村氏は から 生ずる 函数を深く研究しこのような 函数の特殊値がの 個の無限素点にお ける符号分布に応じて得られる 2個の周期で表されることを証明したうえで,この 2個の周期が実は本質的には2個の周期の組み合わせによって得られることを予想しま した.吉田氏はこの予想に取り組み,重さが非常に小さい例外的な場合を除くと,志村 の予想が正しいことを証明しました (On a conjecture of Shimura concerning periods of Hilbert modular forms, Amer. J. Math. 117 (1995), 1019 – 1038).

(2) Siegel 保型形式の基本的周期と 函数の特殊値の研究 花村氏の項で解説したように,大雑把に言って(純)モチーフとは,代数多様体のコホモロジーの直和成分から得られる仮想的な対象です.モチーフ から得られる 数の特殊値 L(n,Mから得られるある種の周期で表される,というのが有名な Deligne の予想です.

種々の保型形式に対してモチーフを対応させることができると一般に信じられてい ます吉田氏は,次数 の Siegel 保型形式 に対して,対応するモチーフの存在と Deligne の予想をひとまず仮定すれば,

(a) は高々 + 1 個の基本的な周期をもち,
(b) から生ずる種々の 函数の特殊値は,これらの基本的な周期の組み合わせに

よって表される,

ということを示しました (Motives and Siegel modular forms, Amer. J. Math. 123(2001), 1171 – 1197) .

吉田氏のこの仕事は一変数保型形式に関する Eichler–志村理論を多変数 Siegel 保型 形式の場合へと拡張するもので,Siegel 保型形式から生ずる 函数の研究に一つの明 快な見通しを与えたものとして,高く評価されています.

(3) Artin の 函数の対数的導関数の特殊値と絶対周期記号の研究

志村五郎氏は CM 型のアーベル多様体のいろいろな周期が,単項関係式とよばれる関係 式を満たすことを示しました.この関係式を用いると,周期に対する双線型形式 p(σ, τ が定義され,志村の周期記号と呼ばれています.を CM 体で 上 Galois 拡大である もの,ψ を = Gal(K/Qの表現で複素共役に関するある種の条件を満たすものとし ます.吉田氏は ψ から定まる Artin の 函数 L(s, ψの対数的導関数 L(s, ψ)/L(s, ψを考察しました.吉田氏は多くの数値計算に基づき,特殊値 exp(L(0, ψ)/L(0, ψ)) が志 村の周期記号を用いて表されること(2次体に対する Chowla–Selberg 公式の一般化) を予想し,特殊な場合にはこの予想が実際に成り立っていることを示しました.さらに 吉田氏は新谷氏の錐体分解と Barnes の多重 Γ 函数を用いて絶対周期記号 gK(σ,τを 定義し,志村の周期記号は本質的には絶対周期記号で表されると予想しました.この絶 対周期記号を用いることによって,上記の予想はより精密な形で定式化されることにな りました.

これらの予想は Hilbert の第 12 問題(類体の構成問題)の解決につながるものと して,多くの研究者の注目を集めていて,吉田氏はこの話題についての一連の成果を 著書 Absolute CM-Periods (Mathematical Surveys and Monographs Vol. 106, AMS, Providence, RI, 2003) にまとめています.また加塩朋和氏との共同研究において,この 予想の 進的な類似についても研究を進めています.

以上のように吉田氏の研究は 函数の特殊値と保型形式の周期の研究を本質的に深 めるものであり,代数学賞を受賞するのにまことにふさわしいものです.

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保型形式論: ─現代整数論講義─ (朝倉数学大系) 吉田 敬之(著)

吉田先生による「志村理論」の解説
(  「整数論(数論幾何)」専攻の若い学者必読!)

保型形式論 吉田敬之01

保型形式論 吉田敬之02

保型形式論 吉田敬之03

保型形式論 吉田敬之04

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志村五郎 著『Introduction to the theory of automorophic functions』志村五郎 著Introduction automorophic functions

保型形式と整数論 土井公二・三宅 敏恒(著)
保型形式と整数論 土井公二 三宅敏恒
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「志村五郎 プリンストン名誉教授の理論」と「吉田敬之 京都大学名誉教授の理論」を学習するための基礎書籍
以下

(個人的に、「平成30年間」に影響を受けた書籍(一部分))
参考

平成30年の「120冊」  個人的セレクト 数学書(数理科学関係 編)

平成30年間の31冊  個人的セレクト 数学書(数理科学関係 編) 洋書(英語版)

「令和」に伝えたい数学書籍  選  平成30年間の和書・書籍「120冊」(日本語)と洋書・書籍「31冊」(英語版)



参考
2013 1010頃
数学者が読んでいる本ってどんな本 小谷元子(編集) 東京書籍 森重文 (著), 上野健爾 (著), 足立恒雄 (著),砂田利一 (著), 黒川信重 (著),小谷元子 (著, 編集), 益川敏英 (著), 野崎昭弘 (著), & 5 その他 など


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